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  五月二十 放課後、由佳里と駅前のクレープ屋に。 部活でいけなかった愛那の羨ましそうな顔が忘れられない。 新商品のラズベリークリームは絶品だった。 さらも食べてみて。 それから、HRで進路希望調査が配られた。 提出は金曜日みたいだから、さらが考えて出しておいて。                                  沙羅  私は金曜日の朝は六時前には置きて六日分の日記帳を読む。  万が一のことを考えて私と沙羅は、日記は机の引き出しの一番下。その奥の方に隠すと決めていた。  今朝、いつものようにそこから日記帳を取り出した私はそこに挟まれていた白紙の進路希望調査を見て頭を抱えた。  沙羅の日記によると提出期限は今日。  朝と放課後、どちらのHRで回収されるのかは分からないけど、私に残された時間は少ない。  基本的に私たちの間で何かを決める時は七日のうち、六日を過ごす沙羅に主導権がある(例えばクローゼットの中の洋服は、全て沙羅が選んだものだ)。だけど、人生に関わるような大事なことは、沙羅は私に決定権を委ねる。高校を選ぶ時も、沙羅は日記に「さらに任せるよ」と書き記すだけだった。  さらと沙羅、どっちが本当の私か。  たまにそんなことを考えてしまうけど、結局のところ私の結論は決まっている。  さらと沙羅、二人合わせて私なのだと。  だから何かを決める時は、私は二人の話し合いで決めたいと思っている(尤も私たちが顔を合わせて話し合うなんて不可能なのだけど)。そして基本的には、私として生活する時間の長い沙羅の意見の方が尊重されるべきだと思っている。  沙羅は私たちのことをどう思っているのだろうか?  もしかしたら彼女は、自分は後から現れたのだから、大事なことは自分が決めるべきではないと考えているのではないだろうか?  そんなことはないと彼女に伝えたい。  もちろん直接は言えなくても、日記に書いて伝えることはできる。  実際にそうしようと思ったこともあったけど、いざ日記帳を前にすると、ペンを握る手が止まった。  今の私があるのは沙羅のおかげで、もし彼女がいなくなってしまったら、私は昔の何かに怯えていた頃に戻ってしまうだろう。  私は今の沙羅との関係を心地よく思っているし、実際に今は何もかもが上手くいっている。  もしも沙羅との関係性が変わってしまったら。  そんなことを考えると、私は彼女に何も伝えられなくなってしまう。
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