1/1
前へ
/4ページ
次へ

 教室に入ると既に愛那と由佳里は登校していて、二人との会話の中で進路希望調査の提出が放課後のHRで、しかもとりあえずは進学希望か進学希望かに丸を付ければ、具体的な学校名の欄は空けたままでも大丈夫だということが分かった。  まあ、二年生のこの時期の進路希望なんてそんなものだろうと一先ず安堵を覚える。  だけども午前中の授業の内容は、ほとんど頭に入ってこなかった。  沙羅のことばかり、私は考えてしまう。  今となっては、私という人間の中に私・さらと沙羅の二人が共存しているのは普通のことになってしまっているけど、これは普通のことではないのだ。  私はもっと沙羅に真剣に向き合わなければいけないのかもしれない。  お昼休み、愛那と由佳里との話題は進路希望調査のことだった。  由佳里はとりあえず進学希望だけど、具体的な学校までは考えていないらしい。 「まだ二年生だし、そこまでは考えてないよ」と、彼女は私に近い考え方のようだった。  まあ、由佳里の成績ならば少し勉強すればそれなりの大学には入ることができるだろう。  驚かされたのは、愛那の方だった。 「私は、専門学校に行きたいなって」  その言葉に、私も由佳里もまさに開いた口の塞がらない状態だった。  私たちの三人の中で一番、というよりも学年でもトップクラスの成績の愛那だから、普通に大学に行くのだと思っていた。  なんでも、美容師になりたくて、そのために専門学校でしっかり勉強したいらしい。確かに前にも美容師に憧れていると言っていたのを聞いたことはあったけれど、それでも驚いた。  まだ二年生といっても、一年後には本格的に将来のことを考えなければいけなくなる。  帰り路、私は一人考える。  私は将来、何になりたいのだろう?  今の自分に、特段何かやりたいことがあるようには思えない。  昔の私ならともかく、沙羅のいる今の私なら、大学に進学することも、就職することも、いわゆる普通の生活を送ることもできるのかもしれない。  沙織は、どうしたいのだろうか?  彼女には、何かやりたいことはないのだろうか?  日記を読んでいるだけでも分かる。  私と沙羅は同じ人間だけど、全然違う。  もしかしたら、沙羅には私と違ってやりたいこととか、将来の夢とかがあるのではないだろうか?  沙羅と話がしたいと思った。  誰よりも近くにいるはずなのに、今は沙羅のことをとても遠くに感じた。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加