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  五月九日 木曜日   曇り  三時間目の体育、バスケをやって膝を擦りむく。  右膝の絆創膏はそういう理由。  ちなみに、今日のお弁当のおかずはアスパラのベーコン巻き。  私ばっかり良い思いしてごめんね。  放課後、愛那と由佳里と三人でカラオケへ。  愛那はいつもの如く美声を披露。  昔はあまり歌わなかった由佳里もマイクを手に取る機会が増えてきた。  十分上手いのにもったいない。  ちなみに私は悲願の八十五点を叩き出した。  次は目指せ九十点。                                  沙羅  六日分の日記帳を読み終えた後、私は溜息を吐く。  今日一日の出来事を思い返し、特段書き記すことがあるように思えず、私は一度ペンを置いた。  同じ人間であるはずなのに、どうして私と沙羅はこんなにも違うのだろう?  何度目かを分からないくらいに脳裏に浮かび上がってきた疑問について、私はいつものように逡巡する。  私と沙羅は、同じ人間だけど、同じ人間ではない。  結局のところ、私はいつもそう思うことで自分を納得させるしかなかった。  だけど、私は沙羅に感謝をしなければならない。  彼女がいなければ、きっと私はとっくの昔に何かに押し潰されて、心が粉々に砕け散ってしまっていたように思えるから。  私は再びペンを握り、二人の日記帳に今日の出来事を綴る。   五月十〇日 金曜日  曇り時々雨  本日も特に異常無し。  お弁当のおかずは筑前煮。  意外と美味しかった。                                  さら  金曜日は気楽なものだ。  宿題を終わらせなくても良いし、明日のことを考えて早く寝る必要もない。まあ、明日の朝起きなければいけないのは沙羅なのだけど。それに私には夜更かしをしてまでやりたいことなど別にない。  部屋の電気を薄暗くして、ベッドの上に倒れ込む。  沙羅は、寝る時は部屋を真っ暗にしているのだろうか? それとも私と同じで真っ暗では寝られないのだろうか?   なんとなく前者のような気がしたのは、きっと私と沙羅があまり似ていないからだろう。  私はゆっくり瞼を閉じる。  ここで眠りにつけば、次に目覚めるのは一週間後の金曜日。  今となってはそのことに対して不安みたいなものは一切感じなくなった。いや、思い返してみれば、始めから私はそんなものは感じていなかったかもしれない。  だって私が眠っている間には、沙羅が私以上に上手に私として日々を過ごしてくれるのだから。
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