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「じゃあ結婚式、呼ぶからね。かならずご祝儀持って来てよね、同期代表」
「はいよ。スピーチで仕事の失敗談暴露したるわ」
「それはやめて。それより今日はわたしも半分払うってば。聡子がどんなお金でもこれっぽっちだなんて思わないヤツだって知ってるし」
「しつこいな、いいよ別に。っつうか昔から全然変わんねえなあ。ほんとうに大丈夫かよ、今度の相手は」
レジ前では問答が続いているが、言葉だけを聞けば喧嘩をしているようでも表情は晴れやかだ。
この店に勤めて半年が経ち、最近わかったことがある。
どうやら人間は、言葉では伝えきれない特別な感情を金に乗せて送ることがあるらしい。
人間社会に貨幣が生まれたのは遠い昔だったと聞く。物々交換をするとき、必要なものを持っている相手を探すのが大変だという理由で、自然発生的に貨幣が生まれ、経済を発展させてきたらしいが、時と共に少しずつその役割を変えてきたのではないだろうか。
私は人間の歴史に想いを馳せながら、一万円札をそっとレジにしまった。
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