【ごじゅうまる】課長

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 おしぼりのひんやりとした感触に浸っていると、突然テーブルに生中三つとハイボールが届いた。もう注文していないはずだ。私が顔を上げると、店員がにっと歯を見せた。 「あちらの会員さまのおごりです」 振り向くと、レジに近い立ち飲み席で魚肉ソーセージを囓っていた若い男が、ひらひらと手を振ってきた。 「話を聞いちゃったみたいなんですよ。みなさんが美帆さんの結婚祝いで集まったって」  なんと、それは私も初耳だ。 「美帆ちゃーん! もう一回乾杯だよー」  優宇が席を立ち上がった。話がどこまで伝わっているのか、店にいた客たちがジョッキを持ち上げて待っている。レジの前で話し込んでいた美帆と聡子が、大急ぎでテーブルに戻ってきた。 そうか。無料とはいえ元を辿ればどこかで誰かが金を出しているのか。私はビールを感慨深く眺めた。 『平和に見える地域でも小さな争いがたくさんあり、その中心にかならず金がある。金は人間同士の障壁になるが、言葉に出来ない想いを伝えるツールであり、どこかで愛と結びついている』 今晩私は同士に向けて、そんなレポートを発信してみようと思った。
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