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人生を左右する出来事が起こりうる大切な時期だというのに、洋服やメイクにもまったく気を遣わないし、流行ものにだって興味がない。恋人はおろか、好きな人さえいないだろう。
聡子はお金を貯めながらずっとひとりで過ごして、そのまま死んでいく気なのだろうか。人付き合いを絶って、一人でただお金を溜め込んでいるだけでは意味がないというのに。
わたしはこれを機に、聡子に大切なものを気付かせたかった。ずっと人付き合いを大切にして、自分磨きにもお金をかけてきた。その甲斐あってか、実は昨日驚きの出来事があったのだ。
「ねえねえ、イカリング頼んでみてもいい?」
優宇が会員用のメニュー表を指した。
「じゃあとりあえず日替わりいくつか注文して、課長来てからまた頼もうか。すみませーん」
わたしは聡子の意見も聞かないまま手を上げて、忙しそうに動き回る店員を呼び止めた。
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