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「ほら、聡子もつまみな。食べても食べなくても割り勘だからね」
美帆が取り皿の上に、きっちり三分の一取り分けたもやしを乗せてきた。
「優宇は食べてばっかりじゃなくて、ビールも飲むんだよ。喉が詰まるから」
ゴムのようなイカと格闘していた優宇が、返事の代わりに手を上げた。
ひととおりの世話焼きをしてから美帆はなぜか背筋を伸ばした。
「今日はふたりに大事なお知らせがあります。まだ誰にも言ってないんだけど、実はわたし、今つきあってる彼と十二月に結婚することになりました」
とたんに優宇が目を大きく見開いて、精一杯の拍手を送った。未だ噛み切れないイカを丸呑みして、ビールジョッキを掲げる。
「おめでとう美帆ちゃん! あらためてかんぱーい」
勢いに押されて、わたしは二度目の乾杯をした。
「まだまだ先だろうなって思ってたんだけど、昨日突然『令和元年のうちに入籍しよう』って言われて。こういうきっかけもありかなって」
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