【よんじゅうまる】店員

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【よんじゅうまる】店員

 奇妙な取り合わせの四人組からも、追加の声がかからなくなった。黒いスーツに身を包んだ、仏頂面の女が席を立つ。先に会計を済ませる気か、レジに向かってくる。  すると同じテーブルにいた、流行りものを纏った女も席を立った。彼女のことはよく知っている。会員番号333は常連だ。  黒スーツの横に並び、333が甲高い声を上げた。 「ちょっと聡子、幹事はわたしなんだからひとこと言ってよね」  人間関係の潤滑剤『ビール』を飲んでも、二人の関係は改善されないらしい。性別も年齢も役職も国籍も、星が違ってさえもつながりを持てるこの場所で、このふたりを隔てるものは何だろう。  黒スーツが二つ折り財布を開く。333は負けじと長財布を開こうとするが、黒スーツの左手がそれを押さえ込んだ。 「いいよ今日は。わたし出すわ」  財布から二つ折りの癖がついた一万円札を取り出し、カウンターの上に置く。
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