【ごじゅうまる】課長

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【ごじゅうまる】課長

 こんなに気持ちが良いのに、なぜおしぼりはいつも無料なのだろう。声をかけるといつでも出てくるなんて、素晴らしい親切心だというのに。私はよく冷えたおしぼりで額の汗を拭った。  人間はものの値段を、より多くの人が欲するものに高く、不要なものに低くつける傾向がある。良心や真心は人間たちのもっとも欲するものだというのに、わざわざゼロ円にしたがるのだから面白い。  私は長らく地球にいるが、いまだにたくさんの気づきがある。人間だけではなく、地球にきたばかりの異星人たちの目を通して教わっているのだ。  例えばごじゅうまるの店員、そ知らぬふりで入社してきた優宇。人間たちは思い切った話をしても正体に気づきはしないが、先ほど優宇は私が同類だと勘づいただろう。  彼らは自分の星が発展するためのヒントを探しにここにくる。人間は知らないのだ。この星が可能性に満ちあふれた柔軟な星であることを。
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