金曜日ごっこ

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 この日、俺と高柳は残業一時間半程度で仕事を切り上げた。    俺の希望で会社からほぼ最寄りの居酒屋で飲むことになる。 「今週もおつかれ!乾杯」 「か、乾杯」    高柳の金曜日ごっこはまだ続いていた。    高柳のビールジョッキが俺のビールジョッキへと当てられ、カチーンッという鋭い音が客もまばらな店内で妙に大きく響いた。 「土日。ヒロはどっか行ったりするの?」 「いや、どうだろう。明日も明後日も特には‥‥」  明日も明後日も会社に行くだけだ。 「そっかー。私は漫画描くんだ~。でも疲れがたまってるのか、なんだかんだで寝ちゃうんだよね~これが」  そう言ってジョッキの三分の二を一気に飲み干す高柳。    連休前を感じさせる、解放的な動作だ。    もはや演技には見えない。 「振休取るの?」 「え、なんで?」  なんでも何も明日はまだ火曜日なのだが‥‥。  とにかく高柳にとって今日は金曜日で明日からは連休のようだ。    その証拠に高柳は明日の仕事のことをまったく考慮していないようで、ぐいぐいと酒をあおった。    それはもう気持ちよさそうに飲むものだから、もはや制止する気も起きない。  結局二時間弱、二人で飲んでいた。  飲んでいる最中の話の大半は仕事が辛いという話。    要は働かないで生きていけたら良いのにねという話だった。
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