金曜日ごっこ

　翌朝。

　高柳は普通に出社してきた。

　それでもやはり昨晩の酒を引きずっているようで、少しばかり怠そうだ。

「さすがに月曜からあれだけ飲むときついだろ」　

「大丈夫、大丈夫。今日を乗り切っちゃえば連休だからね」

「（マジか‥‥）」

　どうやら金曜日ごっこはまだ続いているらしい。

　二日連続の金曜日。

「ヒロ～。金曜だし仕事終わったら飲みいこーよ～」

　間延びした声が向かいの席から届く。

　昨日の朝と比べると少し曇った瞳がこちらをのぞいている。

「飲みに行くのはいいけどさ、体調とか仕事とか、大丈夫か？」

「大丈夫だよ。明日から連休なんだから、多少無理したって仕事終わらせて、飲みに行っちゃえば幸せ幸せ～」

　幸せという言葉とは裏腹にトーンダウンしていく声。

　あまり大丈夫そうには見えない。

　仕事のストレスで頭がイカれてしまったのか。

　今晩飲むときにはもう金曜日ごっこには付き合わず、ちゃんと話を聞くことにしよう。