起点

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「佳純、お昼行こ」 「あ、もうそんな時間なんだ」 気がつけば昼のチャイムが鳴っていた 「集中しすぎだぞ花井ー」 後ろから月島さんが肩を叩いてきた 「月島さんもたまには一緒にどうですか?」 「おお、たまには行くか。食堂にも飽きてきたしな」 「そうそう。たまには気晴らしに外に出るべきですよ」 「何食う?和食にしねえ?」 「じゃあ駅前の然って店にしましょう!あそこの蕎麦美味しいんですよ」 「あーあっこか。気にはなってたんだよな」 「佳純も蕎麦でいい?」 「今日はちょうどあっさりした物食べたかったから良かった!」 「よーし、決まり!」 三人で何を食べるか話しながら会社を出ようとしたその時 前から見知らぬ一人の男性が向かって来ていた あれ… なんだろう どことなく…誰かに似てるような… 「…あっ!」 その人物を見て、真っ先に声をあげたのは菜穂だった 「……しゅ、竣さん」 それに続くように、月島さんが言った 「えっ!?」 「ええっ!?」 菜穂と月島さんが顔を突き合わせ驚く 蚊帳の外の私は黙って二人を見ていた 「久しぶりだな、涼。元気か?」 「元気っすけど…何でここに?」 「ちょっと用があってな」 「誰に?」 「彼女に」 そうしてその男性は、菜穂の方へ視線を向けた 菜穂は何故かとても気まずそうだった 「昨日はすまなかったね。何だか怒らせてしまったみたいで」 「…いえ。何の用ですか?」 菜穂は私の方をチラチラ見ながら答えている 「もう一度君と話したくてね」 「…私はもう話す事はありません 行こ!佳純!」 菜穂はそう言い放ち私の腕を引っ張った 「良ければ今度は、もう少し建設的な話をしよう。席は此方が設けるよ」 「結構です」 菜穂は私の腕を強引に引っ張りズンズン進んでいく 「おい、ちょっと待て!竣さん、風見に何かしたんですか?」 離れていく私と菜穂に、彼はハッキリと言った ーーー「翔介と付き合ってくれないか?」 私は自分の脳が、恐ろしい速さで回転するのを感じていた
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