起点

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今確かに…翔介さんって言った…? そうか… この人…… 誰かに似てると思ったら どことなく翔介さんに似てるんだーー 纏ってる雰囲気は全然違うけど… 多分この人は…翔介さんのーー 「いい加減にして下さい!」 今度は私の腕を引っ張り男性の元へと戻っていく菜穂 「鳥谷さんの彼女はこの子です!!」 そう言って菜穂は私を突き出した 「は…はじめまして…」 思わず吃り気味に挨拶してしまった 「ほうーー君が…?翔介の彼女か」 「…一応、お付き合いさせていただいてます」 「そうか」 男性は冷ややかな瞳で私を見据えている 品定めするかのような絡みつく視線 私はたじろぐ事さえ出来ずに立ち尽くしている 「失礼した。翔介の兄の竣介です。まさか彼女さんが横にいるとは思わなくてね」 「いえ…」 「昨日会えなくて残念だったよ」 「昨日…?どういう…」 「まさか聞いてなかったのかな」 私は菜穂の顔を見た 「…ごめん。実は…そういう約束をしてたの」 「何で何も言ってくれなかったの…?」 「佳純…鳥谷さんに会うって言ったら断ると思って…一昨日の昼にそういう話をしようとしてたんだけど……」 一昨日…そう言えば… 「あー、なるほど。そりゃあ俺も悪かった」 横から月島さんが頭をかきながらバツ悪そうに言った …そういう事だったんだ 「だとしてもーー私に一言くれても良かったんじゃないかな」 「…ごめん」 「オイオイ…喧嘩すんなよお前ら。それに、早く行かねえと飯の時間が…」 今は正直食事どころじゃない 「何だか不穏な空気なようだ。こちらも日を改めるとしよう」 そう言って翔介さんのお兄さんは私に名刺を渡して来た 「落ち着いたら連絡して欲しい。改めて、色々話がしたい」 「…わかりました」 「涼、またな」 「…竣さん。何考えてんのかは知りませんけど…余計な真似はやめてやって下さいよ」 「そんな気を回せるようになるとは、随分大人になったなお前も」 「…うるせえ」 笑みを浮かべ去っていく鳥谷さんのお兄さんと対極的に 私と菜穂の間には暗い影が落とされていた 「佳純…私…」 「…わかってる。菜穂はいつも私の為を思って行動してくれてた…昔から」 でもーー 「だけど!こういう結果になってしまったのは、菜穂のせいだよ……!」 つい声を荒げてしまった 悔しくて仕方がない 菜穂が、翔介さんのお兄さんに気に入られてる事が そして…怖いんだ だって翔介さんも菜穂の事を、狂おしいくらいに思っているのを知ってるから…… 私の居場所が…崩れてゆくのが…怖いんだーー
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