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「…とりあえず、飯行こうぜ。話ならそこでしろよ」
「…佳純」
私の顔色を伺うように、菜穂は見つめている
「…ごめん。食欲無くなっちゃったから今日はやめとく」
「…わかった」
「月島さん、すみませんけど」
「…しゃあねえか。んじゃ風見、行くぞ」
「え?私も…」
「もう蕎麦の口になっちまってんだよ。付き合ってくれよ」
「……わかりました」
「すみません」
そう言って私はまた会社の中へと戻った
そしてその足でトイレに駆け込んだ
…悔しさが込み上げて嗚咽しそうになりながらも、トイレの前で自分に言い聞かせる
「ーー翔介さんの彼女は、私だよ…」
醜い嫉妬が頭から離れない
菜穂が悪いんじゃない
お兄さんが悪いわけでもない
だからこそ…腹が立つんだ…
翔介さんに本当に愛されていないと知りながら付き合う自分も
菜穂を気に入ったお兄さんも
気に入られた菜穂も
そして…異常な程に菜穂を愛している翔介さんも
自分がいない間に全てに置き去りにされているということが、悔しくてたまらなかった
でも諦めない…まだチャンスはある
まずはお兄さんに好かれるように頑張るんだ…
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