起点

18/20

215人が本棚に入れています
本棚に追加
/549ページ
ーーー 「うま!!初めて食ったぜこんな蕎麦」 「…ですね」 「空いててよかったな!昼間に合わなくなるとこだったぜ」 目の前で美味しそうに蕎麦を啜る月島さんには申し訳ないけど、今は蕎麦を食べる気分になれなかった …佳純…怒ってたな。当たり前か… 「おい、風見」 「はい?」 「とりあえず食え。食ってから話そうぜ」 「でも…」 「こんな旨い蕎麦を打ってくれたんだ。ちゃんと食わなきゃ失礼だろ」 「…はい」 私は仕方なく蕎麦を口にした …! 美味しい…! 「凄い美味しいですねこの蕎麦」 「…だろ?」 月島さんはドヤ顔で箸を突きつけてきた 私達は暫く無言で蕎麦を啜り続けた あっという間に綺麗に平らげ、蕎麦湯が出される それを口にしながら月島さんが尋ねてきた 「花井の好きな奴って、翔介の事だったんだな」 「私も訊こうと思っていました。月島さん鳥谷さんと知り合いなんですか?」 「高校の時のツレでな。たまに家にも行ってたから竣さんの事も知ってたんだよ」 「…そうだったんですか。鳥谷さん、どんな人でしたか?」 「……うーん、どんな奴?」 「基本的に無口な方だったぜ。よく告白はされてたが誰とも付き合ったりしてなかったな」 私はそれを聞いて少しホッとした …今更安心してどうするのよ…ーー 「風見は翔介をいつ知ったんだ?」 「…実は、中学が一緒だったんですよ」 「マジかよ。なるほどな。それで花井の代わりに会いにも行ったわけだ」 「…結果的に佳純を傷つけちゃいましたけどね…」 「ところで、何で花井は鳥谷に会いたくないんだ?」 月島さんは急に尋ねてきた 「え…っと」 プライベートな話なので言うのを少し迷ったが、月島さんなら悪いようにはしないと思い話す事にした 「…佳純は、今お父さんが大変な時だから恋愛は自重しようとしているらしいです…」 かなりのめり込んでるみたいだから。とまでは流石に言えなかった 「…へえ。だから避けてるってわけか」 「避けてる…んですかね?避けてるとは言わないような…」 「だが竣さんが水を差してきた以上、会わないわけにはいかねえぞ」 「ですよね」 「あの人は昔から自分の意思一つで動いてきた人間だ。道を遮るもんは全部排除するやり方でな」 真剣な眼差しでそう語る月島さん 恐らく…過去にも何かあったんだろうな 「風見を気に入ったみたいだったしな。多分花井にとって良い風には転ばねえ」 私もそれが気がかりだった… きっと二人の邪魔をするに違いない。それだけは阻止しないとーーー 「いざと言うときは俺も協力するぜ」 「お願いします…」
/549ページ

最初のコメントを投稿しよう!

215人が本棚に入れています
本棚に追加