堕ちる

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色々話したい事あったのに… なんか…全部吹き飛んじゃった… 地に足がつかない感覚に陥り、周りの声が遠く感じた 「…佳純…っ」 「おや、翔介君じゃないか!久しぶりだな!元気だったか!?」 「肥田さん…」 「肥田さん久しぶりですね。今日はありがとうございます」 「いやー、翔介君も竣介君もすっかり大きくなったなぁ。もう君ら兄弟二人三脚で会社は大安泰だな!」 「まだまだですよ」 「鳥谷さん。すみませんが失礼します」 「ああ、また会おう。花井さん」 「あっ!佳純!」 知らないおじさんに話しかけられていた翔介さんが、私の方へ視線をやり声を上げた 私は精一杯笑って答えた 「翔介さん。またね」 「ちょっ…」 「翔介君、もう少し話そうじゃないか!」 「は、離してください!」 「はっはっ、肥田さん大分酔われてますね」 「何を言うか!まだちとビールひと舐めしただけよ!」 「お身体大事にして下さいよ」 「わかっとる!さ!翔介君!日本の酒販業界の未来について君の意見を是非聞かせてもらいたい!あっちで飲みながら話そう!」 翔介さんはおじさんの圧に負けて引っ張られていた 私はそれを見送ると、会場の扉に手をかけ帰ろうとした 「少しよろしいでしょうか?」 「えっ?」 立ち去ろうとする私を呼び止めたのは、春宮さんだった 彼女はにっこりと笑み、ゆったりとした口調で話しかけて来た 「改めまして、春宮彩と申します。よろしければこのご縁を大切に育めたらと思いまして」 「…あ、花井佳純です…よろしくおねがいします」 名刺を渡されたので、シンプルだけど一応持っていた私の名刺も春宮さんに渡した 「もし花井さんさえ良ければ、今度会ってお話出来ませんか?」 「えっ?私なんかで良ければ…」 「ありがとうございます。ではまた後日連絡しますね」 「はい、すみません…じゃあ今日はこれで失礼します」 「御機嫌好う」 会場を後にする私を笑顔で見送ってくれる春宮さん …ちょっと怖い雰囲気だけど… 良い人なのかな それにしても… …本当に綺麗な人だったな 菜穂ならともかく、私じゃ相手にもならないくらい 私は翔介さんに相応しくないと そうハッキリ拒絶された気がした きっとお兄さんはそれが思惑だったんだろうな 街のショーウィンドウに映る自分の顔が これ以上ない敗北感を突きつけてくる どうしようもない悔しさと怒りにまみれながら 私は一人、喧騒の中で孤独を噛み締めていたーー
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