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「えー、遂に来月、合同開発展の日が迫って来ようとしている。というわけでこの企画部からも当日二名の人間が応援に出る事になった」
「とりあえず一人は月島に行ってもらう事は決定しているが、もう一人の人選をどうするかという話なんだが…誰か立候補する奴はいるか?」
「私が出たら駄目でしょうか?」
「…おっ…!珍しいな…花井が手を挙げるなんて」
そう言った寺尾課長よりも
私の方が強くそう思っている…
普段ならこんな事絶対にしたくない
現に今皆が私を見ながら胸を撫で下ろしている
開発展は土曜日、つまり貴重な休みを削って自分から仕事に勤しむ人間はなかなかいないだろう
だけど今は…少しでも仕事に打ち込んであの日の事を忘れたかった
ーーーこれからも良き友人として頼むよ
……お兄さんのあの言葉が頭から離れない
自信が欲しい……何か一つでも…お兄さんに認めてもらえるような物が欲しい
「花井、土曜日だが大丈夫なのか?」
心配して月島さんが話し掛けてくれる
きっとお父さんの病院の事とかを考えてくれてるんだろうな…
実のところ……病院には暫く行っていない
言い方は悪いけど、そんな気分になれなかった
あの日から一週間経った今でも消えないこの気持ちが、どんどん私を深い闇へと落とし込めていく
「…他にいないなら花井に任せようと思うが」
課長のその言葉の後に私の方へ視線を向ける菜穂と目が合ったけど、私は気付かないフリをして目を逸らした
菜穂とも暫く話してないな…
一緒にいると、嫌でも突き付けられる…
劣等感と、敗北感
私はそれをこれ以上味わうのが怖かった…
そして
翔介さんとの連絡さえあの日から絶ってしまってる…
未読の通知が何件か溜まっているけど、今は…返す気になれない
いつまでもこんな状態じゃ駄目なのはわかってるのにーーー
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