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仕事を終え、私は月島さんと二人でいつもの居酒屋にやって来た
「これ、新しく出す美顔器やフェイスマスクの資料だから目を通しといてくれ。いつ質問されてもいいようにな」
「ありがとうございます!」
「あと試作品使ってみて使用感とかちゃんと言えるようにな。相手が男性でもわかるように出来るだけ簡潔に」
「でも化粧品会社に勤める男性ならかなり詳しいんじゃ…」
「専門じゃないとこは意外と知らない人間も多いんだよ。俺の取引相手にもよくある。そういう相手に良さを伝えるには、やっぱユーザーとしての客観的意見が一番大事だろ。
良いとこだけ言うんじゃなく、デメリットも正直に挙げた方がいい。その方が向こうもしっかり思考を割くからな」
「なるほど…わかりました」
「俺もブースの近くには絶対いるようにするし、インカムあるからわからんことあったらすぐに訊いてくれりゃいい」
「…頼りにしてます」
「………とまあ、仕事の話はそこそこにしといて」
「本題に入るが」
その言葉に、私は思わず身構えた
「あれから…竣さんになんかされたんじゃねえのか?」
やっぱりそう思うよね…
月島さん程洞察力のある人が気付かないわけがない
そして私が今隠したとしてもすぐにバレるだろう
私は正直にお兄さんにされた事の顛末を話すことにした
「………というわけなんです」
そして聞き終わるまで黙していた月島さんが、煙草に火をつけ一吸いしてから言った
「…ぶっとんでんなあの男は」
「…翔介さんのお兄さんとはとても思えませんよね」
「翔介はあの兄貴の下でずっと苦しんでた。俺から見てても過干渉だったし、過保護というよりは翔介のする事なす事気に入らねえって感じだったな」
「…あのお兄さんに嫌われちゃってたら…もうどうしようもないかも知れません」
「何でだよ。関係ねえだろ!お前と翔介の問題だろうが!あいつがお前を想ってんならそこに竣さんが入り込む余地はねえ!!」
…たしかにそうだけど
それは翔介さんが私の事を本当に想ってくれていたらの話だ
私は正直…自信がない
菜穂にも、春宮さんにも勝ってる部分がないから…
「月島さんから見て、私が菜穂に勝ってる所ってありますか?」
「風見に…?何で風見?」
「菜穂みたいに綺麗で仕事が出来て私生活もきっちりしていたら…私ももっと自信が持てそうな気がするんです」
「なるほど…風見を羨んでんだな」
「ーーー俺なんかに言われても嬉しくはないだろうが…俺は風見より花井の方が容姿的に好きだが」
「……えっ?」
「いや…容姿的…にじゃねえな。多分全部だな」
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