堕ちる

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え…今の… 冗談??本気?? 「…月島さん……酔ってます…?」 「酔ってねえよ」 「…私のこと、勇気づけようとしてくれてるんですね…ありがとうございます」 「…あんなぁ」 月島さんの眼がーー いつになく真剣だ 「彼氏持ちのお前にどうしてほしいとかねえが、なんか納得いかねえから言っとくけど ずっと好きだったんだよ」 そう告げた月島さんの顔は 酔ったからなのか、別の理由なのか 途轍も無く火照り赤らんでいた 「ハァー…こんな事言ったら不味いよな…これからタッグで仕事しようって奴が」 「え…えと…」 本当に…? 私のこと…月島さんが…? ドッキリとかないよね………? …ないか 「まあ気にすんな。折り合いつけるために言っときたかっただけだから」 無理して作り笑いを浮かべる月島さんに、私は苦笑いで返した 「…は、はい」 なんて答えるのが正解なんだろう 「ちなみに明日『昨日の事覚えてます?』とか聞いてくんなよ。酔った勢いでこんな事言わねえからな」 そうだった…月島さん、チャラそうに見えてこういう所凄く真面目なんだった… 「分かりました…」 「あ、でも翔介に嫌気が差したら言ってこいよ」 「…はは」 多分、いや、絶対にそれはないけどねーー それだけは強く言い切れるよ 私はどんな事があっても 翔介さんが好き…ずっと… 「ご馳走様でした」 店を出ると私は深くお辞儀をして言った 「おう。まああれだ。色々話したが…とりあえずは、開発展頑張ろうぜ」 「はい!頑張ります!」 「また明日な」 月島さんはそれ以上言葉を紡がずに、手を振りながら離れて行く ーー不思議と動揺も高揚もなかった ちょっと前までの私なら違ったのかな… それともただ実感が湧いてないだけなのかな いや…きっと… 自分に自信がないから…何に対しても前向きになれないんだ 僅かでも、胸を張れる何かを…手にしたい だから今は…仕事に専念するんだ じゃないと…見えない重圧に押し潰されてしまうからーー
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