堕ちる

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ーーー翌日 私は春宮さんに指定された場所まで赴いている こないだのホテルの時と同様に、私には似つかわしくない高級な料亭が目の前に聳え立っていた 「…ここ?」 だよね…? 「御機嫌好う」 一人でオタオタしている私の背後から、声がした 「あっ、春宮さん…!お久しぶりです!」 前と変わらずきめ細やかな白い手足を覗かせる着物姿で彼女は立っている やっぱり…綺麗… 既に私の中の劣等感は溢れるくらいにいっぱいいっぱいだった 「お待たせして申し訳ありません。本日はよろしくお願いしますね」 にっこりと首を傾げながら笑う彼女に、私は引き攣った顔で笑い返す 「すみません…こんな格好で来ちゃって」 綺麗目な服を選んだつもりだったけど、私の努力は彼女の前では虚しいだけだった 「いえいえ、とても見目麗しいですよ。私も見習いたいくらいです」 ……なんだか、真意がイマイチ読めないなぁ 「参りましょうか」 連れられるまま敷居の高そうな門を潜ると、庭園が広がっていた テレビでしか見た事ないよこんなの… 灯籠や鹿威しって本当にあるんだ… 私……手持ちで足りるかな 自分の財布事情が気になってくる 「春宮様ですね。お待ちしておりました。いつもの間へご案内致します」 やっぱり常連なんだーー 靴を脱いで中に入ると、庭園を見渡せる高そうな部屋へと案内された 「こちらにどうぞ」 春宮さんの言葉に甘えて先に奥の席に座らせてもらい、上着を仲居さんに預ける 「嫌いな食べ物などありませんか?」 「大丈夫です。なんでも食べます!」 「素晴らしいですね。私など嫌いな物ばかりで…」 私も本当は納豆とか苦手なんだけど…まあ出ないだろうし… 「このお店は特に湯葉が絶品なんですよ。花井さんにも気に入って頂けると嬉しいです」 「あ…ありがとうございます」 「それで、突然なのですが…今日は花井さんにお伺いしたいことがございまして」 「…なんでしょう?」 閑話休題。といったところだろうか… 「花井さんは、鳥谷翔介さんの事よくご存知なのですよね?」 「あ、はい…まあ」 怪しい流れになってきた気が… 「よろしければ、色々教えていただけませんか?」 …そういうことかと、私は漸く全てを理解した
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