堕ちる

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この人は…私から翔介さんのことを聞き出そうとして…ここに呼んだんだ でもそれも仕方ない。彼女はお兄さんから私の事を【友人】と紹介されたんだからーー だからここは、ハッキリ言っておかないと 「……春宮さん。あの日私はお兄さんに翔介さんの友人として紹介されたんですが、実は違うんです」 「私は…私は、翔介さんの彼女ですーーー!」 言えたっ… ちゃんと伝えることが出来た… 春宮さんには悪いけど、ここだけは譲れないんだ 「そうですか…」 春宮さんは残念そうに呟く そのすぐ後に、続けて言った 「では、尚更良くご存知なんですね?」 ………え?? 「鳥谷さんの趣味や特技などを教えていただけますか?後、好きな食べ物等もお願いしたいのですが」 春宮さんの言葉に、思わず私は固まってしまった どういうこと…? 「あの、春宮さんは何故翔介さんの事を知りたいんですか?」 好意以外にあるわけはないと思いつつも、一縷の望みをかけて私は尋ねた 「そうですね。正直今気になっています…花井さんには本当に申し訳ないのですが」 そう微笑みながら答える彼女の顔は 決して優しい笑みではなかった 冷ややかな、全てを凍てつかせるような笑み 「でも翔介さんは私の彼氏なんですけど!!」 笑みに負けじと、思わず声を張り上げてしまう それと同時に料理が運ばれてきた 「まあ!美味しそうですね。花井さん、どうぞ召し上がって?」 飄々とそんな事を言いながら春宮さんはお箸を手に取った この状況で、食べれるわけがないでしょ…! 「あの!先にはっきり言っておきたいんですが、彼女として、質問には答えかねます…すみません」 含みのある言い方をする私の顔をじっくりと眺め、春宮さんが返す 「ですよね。では先に謝っておきます」 「謝ってって……!」 「本当に、申し訳ありません」 彼女はゆっくりと首を垂れる …… この謝罪の正体はきっと 私から翔介さんを奪うという そういう意味の意思表示 言うなれば、宣戦布告だーーー
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