堕ちる

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顔色一つ変えず、瞬きすらせずにそう言い放つ春宮さん 私は自分の手が震えていることに気がついた この人は…異常だ 清楚で可憐な見た目とは真逆の 強かで、冷淡な表情 きっとこの人からしたら… 私なんて、眼中にもないんだ 敵としても見なされていないんだ ーーまた惨めさが込み上げる 「花井さん、お料理冷めてしまいますよ」 「…すみません、急に体調が悪くなっちゃいました…」 私は立ち上がり、自分の上着を手に持つ 「ではまた次回、お聞かせ願えますか」 自信に満ちた不敵な笑み 「…失礼します」 そのまま、春宮さんに一目もくれずにその場から立ち去った …なんで私ばっかり こんなに馬鹿にされなきゃいけないの…ーー 私が一体…何をしたの…? 孤独に苛まれた電車の中で、縋るように彼の名前をなぞる …翔介さん 助けて…… ……分かってる… 私は、勝手に泥濘の中に入り込み、勝手に溺れ苦しんでいるだけだ だけどこの形容し難い思いは 私の前に座るサラリーマンにも 隣に座っている学生にも 楽しそうに話をしている女の子達だって 誰しもが平等に抱える思いなんだーー 人間というものは、そういうやり切れない感情を自ら望み背負い込む生物だ… もういい…これ以上はいらないから 全てを忘れて、貴方のそばに… 劣等感も優越感もない世界で あなたと二人で暮らしていきたい…
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