天罰

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天罰

ーーーーー 「久しぶり…だね」 翔介さんは扉を開き、開口一番そう言った 「長い間連絡とらないでごめんなさい。色々立て込んでて」 「うん…仕方ないよ」 自分でも驚く程あっさりとした再会だった だけど穏やかな心情とは裏腹に、私の中では以前にはなかった気持ちが燃え盛っている 翔介さんに触れたいーーー その一心が今、私の心を支配していた 「とりあえず上がってよ」 「あ、はい。お邪魔します」 「!!」 翔介さんは、玄関で靴を脱いだばかりの私をいきなり抱きしめた 「……正直もう、別れを切り出されると思ってたよ」 翔介さんの漂わせる男性の香りに、私は脳がとろけそうになりながらも答えた 「そんな事…あるわけないよ」 そう… ーーー切り出す筈がないよ 私にはもう貴方だけなんだものーーー 「兄の事は、僕がなんとかするから」 「ありがとう、私もなんとか気に入られるように努力する」 やっぱり、あのお兄さんをどうにかしないといけないんだよね 私達の障壁となる存在は、綺麗に取り除かないとーーー でもそれは後回しでいいか 「材料買って来たから、早速作るね!」 「あ、ありがとう!何を作ってくれるのかな?」 「実は最近練習してる料理があって、翔介さんに食べて欲しいなって思ってたんだ」 「何?」 「んーと、お楽しみです」 「そっか。じゃあ大人しく待ってるよ」 「うんっ!台所借りるね!」 翔介さんは静かにソファーに座りテレビを見始めた 私は料理をしながら考え事をしていた 菜穂の事より お兄さんの事より 春宮さんの事より 先ずは 寺尾課長に天罰を下さないとね 一人の人間の尊厳をいたずらに傷付けた罪は相当に重いですよ課長 でも具体的にどうやって痛い目に遭わせるべきか 私は鍋で料理を煮込み混ぜながら考え耽っていた
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