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「出来たよーお待たせ!」
「良い匂いだね…!」
「うんっ!最近練習してるんだ!ビーフシチュー」
私が翔介さんに振る舞ったのは、お父さんの為に練習していたビーフシチューだった
あれから少しは上達して美味しくなってる気がするけど…
「いただきます!」
「一応バゲットも切ってあるから良かったら一緒に食べてね」
湯気立つシチューをスプーンにとり、翔介さんは口へと運ぶ
「……美味しい!」
「ほんと!?」
良かった…翔介さんがそう言ってくれると、何でも頑張れる気がする
「本当に凄く美味しいよ!これなら毎日して欲しいくらいだ」
「えっ?」
「あっ、いや…ごめん。毎日は冗談だよ」
「ううん!もし来て良いならこれから毎日来たい」
「いや、佳純も仕事があるしそんなわけにはいかないでしょ」
仕事なんてもうどうでもいいもの
ただ行ってお金さえ貰えるなら何だっていい
それよりも私は、ほんの少しでも翔介さんの力になりたい
翔介さんに喜んでもらいたいーー
「じゃあ…佳純が時間の許す限りお願いします。材料はこれで買ってきてくれるかな?」
翔介さんは私にクレジットカードを出しながら言ってきた
「え!?ダメだよそんなの!何かあったら困るし…」
「料理お願いするんだからそれくらい当たり前だよ。それに、佳純は無駄遣いなんてしないだろうし信用出来るから渡すんだよ」
「でも……いいの?」
「うん。寧ろ欲しいものがあるならそれで買って。あ、その時は一応前もって教えて欲しいな」
「えと、それじゃ…食費はここから賄わさせてもらうね?」
「よろしくお願いします」
……頑張って料理もっと練習しないと
翔介さんは残す事なく全部綺麗に平らげてくれた
「ご馳走様でした」
「お粗末様です」
「あ、洗い物は僕がやるからいいよ」
「大丈夫!これくらいやらせて」
私は食器を下げ台所に立ち洗い物を始める
翔介さんはテーブルを拭いていた
「…あのさ」
彼はテーブルを拭き終えそのまま私の元に歩み寄り尋ねる
「今日…泊まって行く?」
「え…!?」
私は一瞬にして自分の顔が紅潮していくのがわかった
実は今日、心の何処かでそれを期待していなかったわけじゃない
だけどまさか…翔介さんの方から言ってくれなんて…信じられなかった
「…それって」
翔介さんは何も言わないで、私を見た
私もそれ以上は追求せずに、静かに頷く
これ以上のやりとりはお互いに野暮だとわかっていたから…
「…お風呂、入っていい?」
「…うん」
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