天罰

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ーーー 十数分後、翔介さんがお風呂から出てくる音がした 同時に心臓が更に跳ね、手は震え出す ドアが開く音がした瞬間、身体が強張った 「…お待たせ。ドライヤー…借りていいかな」 「あ…うん」 ドライヤーを取り立ち上がろうとした瞬間、テーブルに脚を躓いてしまう 「あっ!!」 倒れそうな私の前に翔介さんの腕が咄嗟に飛び出してきた 「…大丈夫?」 「ごめんなさい…大丈夫…」 床に落としたドライヤーを余所にし、そのまま私は翔介さんの胸元にすっぽりと収まってしまう ……翔介さんの鼓動が…こんなに近くに聴こえる 赤面しながら、ゆっくりと見上げると 彼も私と同じくらい頬を赤らめていた 「ねえ、翔介さん…」 腕の中でぬくもりを感じながら、私は尋ねる 「私の事…好き?」 「……好きだ」 「…ほんと?」 「うん。会えない間…凄く寂しかった。いつの間にか、こんなに大きな存在になってたんだ」 …それはーーー ーーー菜穂より……? その問いが頭に過ったけど、その答えだけは知りたくないから訊かなかった 私は この荒んだ心の穴を埋めるような そんな形になるものが欲しい… 些細な事では壊れないくらいの確かな絆が だから… 「翔介さん、私…初めてだけど、いいかな…」 私にとっての、特別を貰うんだーーー 「……うん」 そう言うと彼は優しいキスをくれた そして私達はそのまま寝室のベッドへと移動し、翔介さんは私のローブを脱がせた 「…電気、消して欲しい」 「ごめん。消すね」 明かりが消え、暗闇の中で 彼はゆっくり、優しく私に触れ続け、口づけをくれる 「翔介さん…好き…っ」 私は彼の腕の中で、何度も何度も 抑えようのない気持ちを口にする 呪文のように、彼を魔法にかけるように 私だけのものになってくれるようにーー そして彼も 自分に言い聞かせているかのように、私の名前を呼び続けた 「佳純…っ」 歪な二人の愛は、確かに今形を成して育まれていく 今日という日を私は絶対に忘れない 初めての日、そして始めの日 この時漸く私は 完成したんだーーー
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