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「ごめん、簡単なものしか出来なかったけど」
テーブルには、トーストとサラダと厚切りのベーコンが盛り付けられた皿が並んでいた
「凄く美味しそう!忙しいのに朝からごめんなさい」
「こんなんで喜んでくれて良かった。コーヒーでいい?」
「うん!嬉しい!ありがとう」
翔介さんが作ってくれるというだけで最高の朝ご飯だよ
結局私は終始翔介さんのご厚意に甘えさせてもらい、洗い物以外の全てを任せてしまった
本当は洗い物すら翔介さんがすると言ってくれたけど、流石にそれは私の気がすまなかった
「本当に色々ありがとう。じゃあ、行ってくるね」
準備を済まし、先に家を出る私は玄関で深々と翔介さんに頭を下げて言った
「気を付けてね。今日の夜も来てくれるのかな?」
「うん!終わったら来るね!今日も定時で帰られると思う」
「待ってるよ。行ってらっしゃい」
「行ってきます。翔介さんも行ってらっしゃい」
一瞬キスを期待したけど、手を振り見送られるだけだった
欲張りになっちゃったな、私も
さて…
ーーー夢の時間は、とりあえずこれで終わり
今からは…戦いの時間だーーー
目に映る全てに蓋をするように
私は両目を閉じ未来を馳せた
醜く汚れた、泥に塗れた未来を
ーーー
「おはよう花井。少しいいか?」
着替えを済まし自分のデスクに着いた途端、そう声を掛けてきたのは寺尾課長だった
「おはようございます。大丈夫です」
私は課長に呼ばれて付いていくと、課長は会議室に入っていく
続け様に私も入ると、課長は開口一番私に謝りながら頭を下げた
「昨日は悪かった。いくら仕事の為とは言え配慮に欠け過ぎていた…花井の気持ちを余りに度外視しすぎていたな。勘弁して欲しい」
私は少しビックリしたけど、冷静に返す
「いえ、課長は課長の職務を全うされてるだけなので仕方ないですよ。今回は残念だったと思い諦めます」
微笑む私に課長はホッとした顔をしていた
「そう言ってもらえて助かった。次に何かデカいプロジェクトがあった場合は必ず花井に任せるからな」
「それより私によりも月島さんに謝ってくれませんか。私の為に尽力してくれたので」
「…ああ。だが月島は今日は休みなんだ…私のせいかもしれないが」
「そうなんですか。では次に出社された時にお願いします。もう戻ってもいいですか?」
「あ、ああ。朝から時間取らせてすまないな」
「いえ、これからも頑張ります」
「よろしく頼むよ」
ーーー課長にも一応は悪いと思う気持ちがあったのか
いや……多分違うな
この人はただ、気まずい雰囲気の中仕事したくないだけだ
私に謝る事で楽になって、周りから私と和解したと思われたいだけ
私なら謝れば許してくれるだろうとタカをくくっているんだ
ふざけてる
残念だけど、もう許すとか許さないとかそういう次元じゃ無いの
課長…まずは貴方を
ーー引き摺り下ろしてあげます
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