天罰

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「…花井さんだっけ?優しいのね、貴方」 平井さんは穏やかな瞳でそう漏らした 意外と絆されやすいタイプなんだ… 「貴方みたいな人初めてだわ…今までは私の事を白い目で見る人ばっかりだったから…ねえ、よかったら電話番号交換しない?」 随分あっさり事が運んでる気がする…… まさか向こうから訊いてくれるなんて… この人…多分、寂しかったんだな 誰からも優しくされてこなかったのか 友達が欲しかったように感じる 「あ、是非お願いします!」 私も携帯を出し互いの番号を交換した 「で、私はどうすればいいと思う?」 彼女は身を乗り出し食い気味に尋ねてくる 「平井さんは課長と結婚したいんですか?」 「…どうなんだろ。願望はあるけど、世間の目も怖いし…」 「でも奥さんと別れたなら課長も自由ですし、平井さんも今まで我慢していた分幸せを掴む権利はあるはずです!」 「…そ、そうかしら?」 「そうですよ!」 「…だけど」 一瞬明るい表情になった平井さんだったが、すぐにその表情を曇らせながら言った 「……あの人が私に離婚を隠すと言うことは…あの人は私とは結婚する気ないって事でしょ…」 「それは課長の勝手なエゴです。押し切っちゃえばいいんです!課長は押しに弱いタイプなんで!」 「押し切るって…どうやってよ?」 「とりあえず結婚したいという気持ちを匂わせるんです!あっ、でも課長に離婚の話を持ち出すのはやめたほうがいいと思いますね。離婚したと知った途端結婚したがると焦ってるように見えて男の人は引いちゃいますからね!」 「そんなもんなの…?」 「私の友達はそれで彼氏に逃げられたんですよ…」 「…最低な彼氏ね。わかったわ、その話はしないでおけばいいのね…だけど急にそんなこと言い出したらどの道怪しまれないかしら?」 「そこは私が課長にうまく話してみます。私と平井さんが友達ということにして怪しまれないように仕向けますんで!」 「…どうやって?」 「平井さんの友達が結婚してそれを見て改めて願望が湧いたとか、色々言いようはありますんでその辺は任せて下さい!」 「…わかったわ。お願いね」 …この人大丈夫かな。壺とか買わされるタイプじゃないの…? なんか岡本さんに聞いていた人物像と随分違う気がするんだけどな… なんだかこの人にならどんな詭弁でも通じそう…
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