天罰

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「おはよう…月島、少し来てくれるか?」 「おはようございます。話ならここで聞きますよ」 ピリついた空気がオフィス内に漂う 「…いや、ここだとちょっとな」 「ちょっと、何です?」 威圧的な月島さんの言葉にたじろぎながらも、課長は返す 「…人目につかない場所で二人できちんと話したい。頼む」 月島さんは私と顔を見合わせ、溜息を吐いた後黙って課長について行った 恐らくは課長お得意の言い訳大会が始まるんだろう 逆に課長がその場凌ぎの言い訳でどこまで上手く収拾つけるかも見てみたい気がする まあ、月島さん相手だと下手な言い訳は逆効果だろうけど… 「おはよう佳純」 「あ、おはよう菜穂」 振り向くと、すっかり元気ないつもの菜穂があった 「更衣室行こ!」 「そだね」 ーーー 「…ありゃ?」 「どしたの?」 ロッカーの前で、鞄をゴソゴソと漁りながら菜穂が言った 「いや、リップ無くしちゃった。あれ?先週買ったばっかだったんだけどなぁ…」 誰かに盗られたんじゃないのかな?? 「あっ、私新品買ったばっかりだから使って」 「え!?悪いよ!大丈夫だよ」 「まだ古いのあるし、何なら今日また買うからさ!ね?」 「…ありがとう!じゃあ使わせてもらうね?いくら?」 「いいの。安物だし気にしないで」 「…じゃあまたなんか奢るね」 「ありがとう!」 菜穂の為にわざわざ買ったんだから大丈夫だよ 無かったら菜穂が困るもんね? 菜穂が苦しむ姿は見たくないの ただ…弱く、儚くあってくれればそれでいいの そんな私の思いなど露知らず、菜穂は嬉しそうに鏡と向き合っている 「よし!佳純、私先にお手洗い行ってくるね」 「あ、うん。すぐ行くね」 先に着替えを終えた菜穂は更衣室を後にした
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