天罰

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ーーー 「それで、話というのは?」 駅前の【然】という蕎麦屋の個室で、課長は私にそう尋ねた いきなり本題に入るあたり心配で仕方ないんだろう 「知ってます?ここの蕎麦凄く美味しいらしいですよ」 「あ、ああ…一度来たことがあるよ。確かに凄く美味しいね」 「私も来てみたかったんですよ」 「まあ、今日はこないだの件のお詫びだと思って好きなだけ食べてくれ。私が持つから」 「いいんですか?ありがとうございます!」 「うむ。それより話というのは?」 すごい焦るなぁ。余程気になってるのかな まあ時間もあまりないしね 「ではいきなり本題に入りますけど… 課長って経理の平井さんと不倫されてますよね?」 「……何?」 明らかに課長の顔色が変わる おしぼりを握る手が微かに震えていた 動揺しすぎてちょっと面白い 「…そんなの噂だろう?」 内心ドキドキしてるんだろうなぁ 「いえ、実は私…平井さんとは同じ料理教室に通ってまして知り合いなんですよね」 「そ、そうだったのか!?」 平井さんが料理教室に通っている話はこないだカフェで少し聞いていた 当然ながら私は通っていないけど 「そこで仲良くなって、たまたま聞いちゃったんですよ。安心して下さい!誰にも言いませんから」 そう聞いて観念したのか、課長はすぐに折れた 「…た、頼むよ?本当に」 と言っても、もう社内でも随分有名らしいのに何を今更…私は知らなかったけど 「はい。そこは信用してください」 「じゃあ、本題はそこじゃないのか?私を強請るとかじゃないんだな」 「違いますよ!そんな事したら平井さんにも嫌われちゃうじゃないですか!あ、ちなみに私がこうして課長と食事してるのも言わないで下さいよ?あの人結構嫉妬深いですから…」 「ああ…知っている…言わないよ」 やっぱり嫉妬深いんだな。そんな気はしたけど 「課長に訊きたいのは、課長は平井さんと結婚する気があるのかという事です」 「……いや、私には妻子がいるから…彼女の事は本気で好きだがそういう事は多分無理だろう」 まあこの人はそうなんだろうな。自分の平穏は崩したくない人だろうし 要は楽しく安全に遊びたいんだろうな。それでプライドが高そうで誰にも口外しなさそうな平井さんはうってつけだったんだろう でも全然わかって無いですね ああいう人ほどハマったら怖いんですよ いや、さっきの反応的に課長ももう気がついたみたいだな… 正直今扱いに困ってる感じがする 課長は課長で何か秘めた思いがあるのかも知れない
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