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「でもだとするとまずいですね…」
「まずい?」
「平井さん、最近課長と結婚する気満々なんですよ」
「え!?それはおかしいぞ!?彼女も私が妻と離婚できないという事は重々把握してくれているはずだが…」
「実は最近料理教室の一人が結婚してしまって、彼女にも火がついちゃったらしいんですよ…もしかしたら課長との関係を奥さんにバラすつもりかも。そんな風な話もしてたし…」
「な、何を言ってるんだ…!そんなのダメだろ!」
顔面蒼白になりながら課長は叫んだ
「ですよね…だから課長はあまり平井さんを刺激しないようにしないとですよ!」
「と、言うと…?」
「とりあえずは平井さんの思う通りにしてあげましょう。彼女も課長が前向きに考えてくれてるとわかれば下手な行動には出ませんよ」
「…だ、だが…もし話が進んでいったらどうなる!?彼女と結婚するなんて話になったら…」
「私に任せて下さい。彼女にうまく言って説得します」
「花井が?」
「はい。課長と奥さんには仕方なく離婚できない理由があるからと言ってみせます」
「…それでいけるか?」
「娘さんの為とか言えば納得してくれますよ。平井さんは優しいので多分許してくれます」
「…そうか。まあ、彼女には悪いが私は今は妻とは別れられないんだ…だから花井…すまないがよろしく頼む!」
「任せて下さい。とりあえずお蕎麦頼みませんか?お腹空いちゃいました!」
「あ、ああ。そうだな」
ーーこの人は本当に純粋な人なんだな
ただ純粋に…馬鹿で屑な人なんだ
切迫した状況が来ると分かっててもどちらかを選ぶと言う選択肢が出てこないなんて
完全に
「女を舐めてますね」
「えっ?」
「あ、独り言です。どの蕎麦にしようかなって」
「ああ。やっぱり十割がいいんじゃないか」
「そうですね!ではそれにします!」
この人は自ら沼にハマるタイプだ
気がつけば抜け出せない所まで
ズブズブと…ゆっくり沈んでいく
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