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女
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今日もいつものように、何事も無く業務を終える
そしていつものように彼に会いに行く
それが、側から見て蔑まれる関係だったとしても
私の世界には、彼が必要だからーー
「お待たせ」
「やあ、お疲れ」
待ち合わせ場所は職場から三駅程離れたショッピングモール
以前繁華街で見られてからは、あまり大っぴらな場所での待ち合わせは控えるようにした
と言っても、職場では私達の関係はすでに周知の事実だけど
「今日は何時まで?」
私達の時間は決まってこの問いで始まる
「んー、9時半くらいまでかな」
「わかったわ。お腹空いたからどこか入りましょ?」
「そうだね。何が食べたい?」
「…勉さんが食べたいものでいいわ」
「じゃあ、居酒屋にでも入ろうか」
「そうね」
彼の後ろ姿から微かに哀愁が漂う
少し白髪混じりのその頭が更にそれを強く感じさせた
自分より一回り以上も歳の離れたこの人に
私は今日まで溺れ続けている
誰かが以前、陰口を叩いているのを聞いた
『平井さんって可哀想な人だよね…』
可哀想??
馬鹿じゃないの?
言いたい奴には言わせとけばいい
幸福の尺度を他人が計るなんておこがましいにも程がある
私は彼の横で、こうして歩けている事が十分に幸せなのーー
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