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とは言え…
強がってはいるけれど、もっと幸せになりたいと思う自分がいるのも否定出来ない
そしてそこに光明が差したとなれば尚更強く望んでしまう
ーー来月になれば彼が私のものになるかもしれない
その期待が私の心を逸らせている
「そういえば勉さん、最近知ったんだけど…花井さんって勉さんと同じ部署らしいわね?」
「え…?ああ、花井か…そうらしいね…俺も驚いたよ」
「私の事何か言ってた?」
「ああ。同じ料理教室に通ってるんだって?」
ああ、そう言う設定なのね…
「…そうなの。すごい偶然よね?驚いたわ」
「仲良いのか?」
「いいわよ。ずっと連絡も取り合ってるし」
さっきも連絡が来たしね…まあ、今日は会えないって断りの連絡だったけど
でもそのお陰で今日勉さんに会えたしちょうど良かった
「そうか…。しかし料理教室も通い出してだいぶ経つだろう。そろそろ料理もプロ級になったんじゃないのか」
「ええ。いつでも準備をしとかないとね」
軽く牽制のつもりで、私は笑顔で言った
「そ、そうだな…」
やっぱり反応はあまり宜しくない
意味はわかってるよね?
貴方と暮らす準備って意味よ?
……幾ら鈍いこの人でもわからない筈がないか
「おっと」
動揺したのか、彼は持っていたグラスのお酒を零してしまう
「大丈夫?」
「いやぁ、最近耄碌して来てな。もう歳だよ…白髪もこんなに目立って来て…これじゃいつ咲子に捨てられてもおかしくないな」
「…安心して。私はそんな白髪混じりの貴方も好きだから」
そういう哀愁漂うところも…貴方の魅力よ
「…あ、ありがとう」
でもなんでそんな言い方するの…?
この人は私をどう思ってるんだろう…
こんなに愛してるのは、私だけなの?
貴方からしたら、私はただの遊びなの?
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