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「課長がそういう意思を見せてくれてるなら、ここからはガンガン押していくべきじゃないですか?」 「でも…私、あんまり焦らせたくないのよね。ガッついてると思われるのも嫌だし」 「何言ってるんですか!こういうことはガッついてるくらいでちょうどいいんですよ!」 …知らないけど 「だけどいずれそうなるなら待つべきじゃないかしら…?」 「甘いですよ!もしまた課長が心変わりして奥さんと仲良くなったらどうするんですか?」 私がそう言うと平井さんは暫く考え込み、深く頷き答えた 「…それもそうね。悠長に構え過ぎていたわ」 「とりあえず二人で住む家とかも今の内から決めておいたらどうですか?」 「わかった。明日から不動産会社見て回るわ」 すんなりと私の提案を受け入れてくれる平井さん 「はい!いい物件あったら教えて下さいね!」 そうして私達は少し話し込んで別れた その足で私はまた食材を買い込み翔介さんの家へと足を運ぶ 「おかえり」 玄関で迎えてくれる翔介さんの顔を見るだけで私の顔も綻んでしまう 「ただいまー」 「今日も残業?毎日大変だね…」 「最近忙しくて。すぐにご飯作るね!」 「ゆっくりでいいよ。佳純のタイミングで」 「大丈夫大丈夫!今日は玉ねぎと鶏肉が安かったから油淋鶏にしようとおもうんだけど、いいかな?」 「油淋鶏美味しいよね。期待してるよ」 「あまり期待しないでね…」 「佳純の料理にハズレなしだからね」 彼の優しい笑みを見るだけで胸が締め付けられる ーーー今 私の中に、二つの自分がいる 彼の前で穏やかに日常を過ごしたいと願う自分 ドス黒い感情で他人を傷付けることに躊躇いすら持たない自分 そんな二つの自分を上手く使い分けている事が、怖くなってくる 肥大していく 理想の出来た彼女像と 非道で外道な悪女像 もしそんな二面性を翔介さんに知られてしまったら… 私達はどうなってしまうんだろう ただーー その歪みは翔介さんも持ち合わせているから 本性を隠して繕って誤魔化して その形をギリギリで留めるだけの、空虚な関係 私は、薄々気が付いていた この恋の終着は…関わる全ての人を不幸にするのだとーーー
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