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「とても美味しかった。ご馳走様でした」 「いえいえ、お粗末でした」 食べ終わると、スッと立ち上がり翔介さんは洗い物を始めた 「あっ、ごめんなさい」 「座ってていいよ」 笑顔で制され、私は思わずソファーに腰掛けてしまった 「これくらいさせてよ」 知ってる?私…翔介さんのためならどんな事も苦にならないんだよ? だからそんな風に気を遣ってくれなくてもいいのに… ーー片付けも一段落し、二人でテレビを観た後お風呂に入り寝間に着く 私の頭に手を置く翔介さんの顔を見て、私は未だにドキドキが止まらない 「佳純はさ」 「え?」 「今まで何人くらいの人と付き合ったの?」 「何人って…私、初めてだよ。翔介さんが初恋だから…」 「そうなんだ。なんか恥ずかしいな」 「翔介さんは…?」 「僕は…うん、数人かな」 やっぱりいたんだ…家には呼んでないって言ってたけど… 「でも、誰といても何処にいても…満たされることはなかったよ。 心から楽しめたり癒される事は決して無かった」 ずっと心の中に、菜穂がいたからだよねーー 「だけど最近は」 私の頭を優しく撫でながら、耳元で囁く 「毎日満たされてるんだ」 意識が飛びそうになるくらいに私は舞い上がった 「翔介さん…触りたい」 「うん、僕も…」 そして私と翔介は二度目の情交に及ぶ 他の誰が不幸になるとしても 私は構わないーーこのぬくもりだけ守り切られるなら… 何度訪れようと褪せる事の無い奇跡のような夜は 惜しむ暇さえ無く瞬く間に更けていった ーーー 翌朝、またもや痛みを引き摺りながら心配する顔の翔介さんに見送られ私は会社へと向かう しかし世の女性は偉大だな。こんな痛みを遥かに凌駕する出産という大イベントを、人によっては何度もこなすんだから… 「おはよう花井」 会社の前で振り返ると、余韻に浸る私を現実に引き戻す陰鬱な顔がそこにあった 「おはようございます課長」 そわそわしながら課長は私に尋ねた 「どうだ?話してくれたか」 「昨日会って話しましたが…すみません」 「なっ、何か言ってたのか!?」 「もう我慢出来ないと平井さんが泣きだしてしまって…ああなってしまったらもう、私ではどうすることも出来ません」 「オイオイ…話が違うぞ!なんとかしてくれると言っていたじゃないか!」 「私もそのつもりだったんですが…課長に結婚の意思があると聞いたのが引き金になったようで…」 「ど…どうしてだよ!私は彼女を刺激させないようにしただけだぞ!花井の言う通りにしたんだ!それなのにーー」 出た。責任転嫁 ダサすぎて笑いが出ちゃいますよ課長 「続きを聞いてくださいよ。一つだけ方法があるんですよ」
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