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ーーー 「家賃16万!?馬鹿なのか!?それ私が払うのか?!」 ランチタイム、私達の作戦会議室とも呼べるカフェで課長は青ざめた顔で叫んだ 「はい…すみません。何故かそういう話になっちゃいまして…」 「……妻子ある私がどうやって16万も捻出するんだよ…勘弁してくれよ…」 「私も必死で止めたんですけど…平井さんが子供が出来た時の為に家は大きいに越したことはないと…課長は身軽になれば16万でも平気でしょうし、最悪平井さんに も貯金があるからと」 「あいつ…一体何を考えてるんだ。そもそも今住んでる家のローンでも16万もしないぞ」 「平井さんはただ着々と課長との人生設計を立てているだけだと思います。責めてあげるのは可哀想ですよ…」 「だが私の給料で16万は現実的じゃないぞ…」 「でも、言ってましたよ!この家があれば課長の事を気長に待てるって」 「…本当に待ってる間に彼女の結婚意欲も失せるんだろうな」 「はい!課長がたまに泊まってあげたりすれば彼女の心も満たされるはずです!」 「……何だか、深みにハマっていってる気しかしないんだが」 ご名答です 「今は耐える時です!ほとぼりが冷めたらまた以前のような関係性に戻れますよ!」 「…う、うむ。サポートは頼んだからな!花井!」 「はい!」 全力でサポートしますよーーー 貴方の転落をーーー ーーー 「本間さん、ちょっといいですか?」 「ん?どうした?」 会社に戻ると、私はデスクで昼食を摂っていた本間さんの元を訪ねる 「ちょっと訊きたいことがあるんですが、本間さんって毎年課長にお歳暮送られてますよね?」 「ああ、送ってるよ。もしかして花井も送るの?」 「はい、最近よくお世話になってるので送ろうかと思いまして」 「殊勝だねぇ…ほんと感心するよ。何かに書くからちょっと待ってね」 メモにさらさらと書き記し、本間さんは私にそのメモをくれた 「ちなみに、俺は今年ハムセット送るつもりだから出来れば被らないように頼む」 朗らかに笑いながらそう続ける 「分かりました。違うものにします」 私も笑いながらそう返す 「ハハ、でもまあ被っても課長は怒らないから大丈夫だよな」 そりゃ愛人にあげるだろうから大丈夫なんですよ 「他の若い社員も花井みたいだったら会社も安泰だろうね」 「いえ、そんな事ありませんよ」 私みたいな人間ばかりだと会社は一瞬にして潰れちゃいますよ 私は多分壊すことの方が得意なんです だって今… 自分の中にある破壊衝動が息づいているのがわかるから かつてないほど、心臓が高鳴っている もうすぐ私は…誰かの幸福を奪うんだ
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