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夕刻、彼女は買い物を終え帰路に着こうとしていた
今日の晩御飯は旦那の好きな土瓶蒸しでもしてあげようか
肌寒い夜にはきっと一層美味しいと思うから
そんな事を考えながら彼女はマンションのエレベーターに乗り込もうとした
そして彼女がボタンに手をかけたその時だった
「こんばんは」
スッと伸びてきた手が先にボタンを押し、一人の女性が彼女に声を掛ける
「こんばんは…」
このマンションにこんな人住んでいただろうか
彼女がそう思っていた矢先、その女性は発した
「少しいいですか?寺尾さん」
「!?」
思わず名前を呼ばれた彼女は尋ね返した
「…どちら様?」
そして女性は目を細め口角を上げて答えた
「初めまして、私…花井佳純と申します」
「…は、はぁ」
「いつも寺尾課長にお世話になっています」
「…あっ!もしかして主人の会社の人?」
「はい。同じ企画部で働かせていただいてます」
「そうなの?初めまして。こちらこそ主人がお世話になってます…で、何か用かしら?」
「ええ。少し…寺尾課長の奥さんに伝えたい事がありまして」
「…?」
「単刀直入に言いますね…
寺尾課長、不倫してるんです」
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