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いきなりそんなことを告げられ、この人はどんな顔をするのだろう
困惑するのか、激怒するのか
それとも泣き崩れてしまうのか
だけど奥さんの反応は、私の考えるどれとも違っていた
「…知っていたわよ。薄々だけどね」
「え…?」
割とあっけらかんと、奥さんは返した
「そりゃ毎日のようにあんなに帰ってくるの遅かったら誰でも気が付くわよ!残業残業ってそんなに残業があるわけないじゃない!」
「…知っていたんですか。咎めたりしたんですか?」
「してないわ。別にもうどうだっていいし、お金さえ稼いでくれたら私も娘も文句ないしね」
思っていたより、途轍も無くドライな考えだった…
もう愛は無いって事かな…
「別れるつもりとかは無いんですか?」
「…あなた、主人の事嫌いなの?」
「えっ!?どうしてですか!?」
いきなりそう言われ、私は声が上擦った
「だって普通こんな事わざわざ言いに来ないでしょ。相当恨んでるんじゃないの?まあでも申し訳ないんだけど、あなたが望んでる展開には多分ならないわよ」
「…恨んではいません!私はただ、不倫というものが許せないだけです!奥さんは腹が立たないんですか!!」
「最初は立ったわよそりゃあ。だけど思ったのよ…あの人って浮気するタイプの人間だし、そんな人を選んだ私にも多少責任があるし、私も娘にばかりかまけて夫を蔑ろにしてきた部分があるから」
「…そういうものなんですか…」
まずい。
私の考えるビジョンと違ってきた
まさか奥さんがこんな冷めた人だったなんて
このままだとあの男は許されてしまう…のうのうと浮気ライフを続けてしまう…
「じゃあ、課長が奥さんと別れて浮気相手と再婚しようとしてるのも知ってますか?」
こうなったらいくところまで行くしかない
「…なにそれ」
「実は私、課長の浮気相手の方と友達なんですよ。だから不倫をやめて欲しいって気持ちもあったんです。その人が言ってたんですよ、課長がもう離婚の準備をしてくれてるって」
「適当に言ってるだけでしょ。あの人の常套手段じゃない」
奥さんにまでそう思われてるのか…やっぱり
「これを見てもそう言えますか!?」
私は切り札のつもりで持って来ていた封筒を突きつけた
「何これ?」
奥さんは封筒を開けて中身を見て私に尋ねる
「課長と浮気相手が借りてるマンションの物件情報です。このマンションの家賃、課長が払ってるんですよ」
正確にはまだ払って無いけど
「…どういう事よ」
奥さんの顔色が明らかに変わっていく
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