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始業開始のチャイムが鳴っているのに、社内はまだ喧騒を残している
原因は一つ。課長が人事部に呼び出されたからだ
好き勝手に噂話を繰り広げる人達の傍ら、私は一人困惑していた
何故なら私はまだ…何もしていないから
…まさか、奥さんが密告した?
いや…奥さんの立場を考えるとそんなことをするメリットは全く無い筈…寧ろ仕事に支障を来されると慰謝料取れなくて困ると思うし
じゃあ一体誰が…
「おい!課長やばいらしいぞ!もしかしたらクビだってよ!」
どこから聞きつけたのか、社員の一人が小走りでオフィスに駆け込みそう言った
「…もしかしてやっぱり不倫がバレたとか?いつかそうなると思ってたわー」
隣で岡本さんがそんなことを言っている
「いや…何でも会社の金使い込んでたらしいぞ」
「それ横領じゃない!!」
誰かが言ったその言葉に、更にざわつきが増した
…な、な…
何してくれてんのあの人!!
信じられない…まさか不倫だけに飽き足らずまだ悪事を働いてたなんてーー
とんだ極悪人だった…
しかも自分から身を滅ぼしてるし…ほんとなんなの…
私の計画が、全て水の泡だ…
横領しているとなるとーー平井さんも関係してるのかな
「皆さん!」
もう騒ぐのは終わりにして仕事しましょ!まだ事実がハッキリしたわけでも無いんだし、もしそれがデマだったら責任取れんでしょう?」
一喝するように叫んだのは、月島さんだった
「確かにそうだよ。課長が聞いたら傷つくだろうしこの話はここで終わろう。さっ、業務に集中集中」
続いて本間さんが穏やかに皆を制止した
月島さんと本間さんの言葉で我に返り、ぶつくさと何かを言いながらも各々に仕事に取り掛かる
結局、昼になっても課長がオフィスに戻って来ることはなかった
「…課長どうなっちゃうんだろうね?佳純は知ってたの?」
休憩室で菜穂が私にそう尋ねてきた
「全く知らなかった。私もビックリしてるよ」
「…しつこく聞くけど前に言ってたプライベートな話って何なの?」
まあもう言ってもいいか。今更だろうし
「課長が不倫してる話知ってる?」
「まあそりゃ…有名だしね」
「私その不倫相手と実は友達なんだ」
「えぇっ!!」
「菜穂、声大きいよ…」
「ごめん…それが最近よく二人でお昼行ってた理由なんだ」
「まあ。色々お互いの相談に乗ってたんだよね」
「…でも佳純、あれだけ課長に怒ってたのにどうしてそんな事してあげるの?」
「うーん。課長のせいでその子が不幸になるのは可哀想じゃない?だからかな」
「…なるほど…なのかな?」
いまいち納得していない様子で菜穂は首を傾げた
それもしょうがない。暴論過ぎて自分でも訳がわからないくらいだし
「まあでも、不倫の時点で結局最後は不幸になる気がするけど…」
「まあ、ね」
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