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だけど…幸せの尺度は人によって違う 不倫だとしても、そこに愛があれば幸せになれるんじゃないかな 例えば出会うのがもう少し早ければ…そんな風にはならなかったかも そんなもしも話を考えてしまうのは きっと私のその尺度のど真ん中に…菜穂がいるからだ 翔介さんだけじゃないんだね 私もまた、心に大きな楔を打ち込まれている 【風見菜穂】という楔をーーー 「花井さん!」 えっ!? 叫びながら休憩室に駆け付けて来たのは、ここにいる筈の無い平井さんだった 「平井さん!どうしてここに…!?」 「勉さんが横領でクビになるって本当なの!!?」 私の質問は無視され、質問がきた 「えっ?なんでそんな事知ってーー」 「経理部で噂になってるのよ!!もし横領が原因だとすればうちも無関係じゃなくなるからって…!」 「な、なるほど…でも私も何も知らないんですよ…」 「あの…もしかして佳純…この人が、課長の?」 置いてけぼりだった菜穂が横から私に尋ねる 「うん…課長のふ、恋人の平井さん」 「初めまして…寺尾課長の部下の風見です」 「初めまして。でも今それどころじゃないからごめんなさい」 平井さんの狼狽え様に、菜穂も苦笑いしていた でもこの様子だとやっぱり課長とは無関係だったみたいだな 「花井さん、勉さんは今どこ!?」 「いや私も知らないんですってだから」 どうでもいいけど、菜穂のいる前でこの人と話すのはなるべく避けたい つい余計なことを口走ってしまいそうになる 「私、人事部にまで行って来るわ!」 「落ち着いて下さいよ平井さん!行っても仕方ないですよ!!とりあえず、今日終わったら連絡しますからそれからまた話をしましょう!」 宥めるように肩を掴み、私はそう言った 「…わかったわ。また連絡して…待ってるから」 「はい…もう休憩も終わっちゃいますんで、また後で」 来た時とは反対に、平井さんはトボトボと歩きながら帰っていく 「…強烈な人ね。美人だけど」 かなりね… 「でも課長の事本当に好きなんだと思うな。彼女も」 「…そだね」 課長の奥さんのあのドライな感じを見てたら、平井さんの方が課長と一緒になるべきなんじゃないかとも思ってしまう ーー奥さんにも昔はあったのかな 課長の為に、あそこまで取り乱せる熱量が…
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