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店内に疎らにいる人達が、私の声を聞きこちらを見ていた
「…信じてたのに…本当に…」
「目を覚まして下さい。平井さんなら、もっと良い相手がいる筈ですよ」
「……彼じゃ無いと駄目なのよ」
「これから沈む船ですよ…貴方も一緒に沈んでいくつもりですか?」
「…覚悟はしてるわ」
儚くも、毅然とした表情で彼女は言った
初めは弱そうに見えたけど
私より、全然強いなーー
この人なら…きっと大丈夫だ
「そうですか…貴方とこうして話してる時は本当に楽しかったです。それは嘘じゃありませんので」
彼女に背を向け、私は歩き出す
「待って!花井さん!」
「…さようなら」
追い掛けて来ないように
精一杯の冷徹な眼と声で制して
私は二人分の会計を支払い店を出る
その間にも彼女は椅子に座り俯いたままピクリとも動かなかった
ーーー本当にごめんなさい
平井さんーーー
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