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「あー、わりい。なんか無駄に気回しちまったみたいで」
「月島さん!私もう本当に吹っ切れたんで!」
「まあそれなら良かったわ。風見も悪かった」
「私は全く気にしてませんよ。んじゃあまあ、とりあえず頑張りますね」
「おう。頼むな」
「よろしくね菜穂」
「うんっ!」
今こうしてここで二人と話しているのは私じゃない
本当の私は…人を陥れて人生を狂わせるような屑だ
月島さんも菜穂も、常に私の事を考えて動いてくれる
私のことなんて考えないで…
愛さないで…
じゃないと私は
いつか大事な物全部を
切り捨てないといけなくなる
そんな予感がしていたーーー
ーーーー
仕事終わり、私はいつものように夕飯の買い物をして翔介さんの家へと向かう
「おい」
「!?」
一瞬自分に対して言ったのかと驚き振り返ったけどどうやら違ったみたいだった
見ると、中年くらいの男性が若い金髪の男の子に声を掛けられていた
「おっさん。人にぶつかってすみませんの一言もねえの?」
「ぶつかったのはお互い様じゃないか!それにこっちは君のせいで眼鏡を落としてしまったんだぞ!見ろ!ヒビが入ってる!」
「はぁ?」
中年男性は若干怯えているように見えるけど必死に強がっていた
「てめえがスマホいじりながら歩いてたんじゃねえのか?舐めてんのか?」
「ぐっ……気を付けろっ!」
ばつが悪くなったのか、男性はそそくさとその場を去ろうとする
すると
「待てよオイ」
金髪の男の子がその男性の襟を後ろから引っ張り、男性は後ろに倒れ込んだ
そしてそのまま
男性の顔に拳を叩きつけた
ゴンッ!という鈍い音と共に伸びる男性
「カスが偉そうに喋んな」
男の子は男性の眼鏡を踏みつけながらそう言った
「…ん?」
そして何故か私は不思議と
その光景に心を奪われていた
「…何見てんだよお前」
まじまじと彼の顔を見ると、まるでドラマの俳優みたいな端正な顔立ちをしている
だけどそれよりも惹かれたのは
全てを憂い
憎むような
漆黒の瞳
思わず…吸い寄せられる…
あれ?なんかこの人…どこかで見たことあるような…
「…きっしょ」
男の子はそう吐き捨て私の横を通り過ぎ去っていく
…なんで見ず知らずの人間からいきなり気持ち悪がられないといけないのか
まあ…いっか別に
二度と会う事も無いだろうし
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