加速

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「ただいまぁ」 「おかえり佳純。お疲れ様」 「翔介さんもお疲れ様!」 「…あれ?誰か来てたの?」 テーブルの上に二つのグラスが置いてあるのを見た私は思わず尋ねた 「うん。さっきちょっと弟が来ててさ」 「弟…」 「以前弟に車貸してたせいで佳純を迎えに行けなかったでしょ。また貸してって来たんだ」 そういえばそんなことが前にあったような… 「弟さんってどんな子なの?」 「一言で言うなら…犬、かな」 「…い、犬?」 「とにかく人懐っこい奴でさ。俺と違って兄貴にも好かれてるよ」 「へー…会ってみたいなぁ」 「また紹介するよ。ちょっと片付けしておくから今日はお風呂先に入る?」 「あ、そうします…ごめんなさい。上がったらご飯作るね」 「いえいえ、ごゆっくり」 翔介さんの弟さんか… ということはもしその弟さんが会社の跡取りになれば、お兄さんが翔介さんに固執する事も無くなるんじゃ… …弟さん次第かーー 「はぁーっ」 熱めのシャワーが冷えた身体に染み渡り、安堵と憂鬱が入り混じった溜め息が漏れ出す ーー課長の件が済んでも、やる事は山積みだ お兄さんと、春宮さん 翔介さんと幸せになる上でこの二人は絶対に避けては通れない 早く何とかしないと、向こうからまた動きを見せるかもしれない ーーー お風呂から上がり、簡単なハヤシライスを作り私達は食卓についた 「今日も美味しいね」 「ありがとう。そういえばさ…最近お兄さんはどうしてるの?」 あの日以来、姿を全然見せなくなったのが逆に怖い また裏で何かしているんじゃ… 「あ、兄貴なら今海外出張に行ってるよ。確かミュンヘンだったかな」 「ドイツにいるの?」 「うん。みたいだね…ずっといればいいのにね」 顔は笑ってるけど、目が笑っていないから結構本気で言ってるようだった それにしても海外…翔介さんがもし後を継いだら行かなくちゃいけなくなるんだろうか 例え僅かな期間でも、翔介さんと離れるなんて耐えられないよ…
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