加速

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ーーその日は朝から気分が重かった でもそれは 外の雨模様のせいでも 翔介さんが早出だったせいでも 寝癖がなかなかまとまらなかったせいでも無い 恐らくは、今朝見た夢のせいだ 「君はやっぱり、僕の思っていた人とは違ったみたいだ」 夢の中で翔介さんにそう言われた 必死に縋り付く私を振り払い、彼は歩いて行った その先にいたのは私の親友だった 「さよなら」 「待って!翔介さん!待って!!お願い!」 私だけ…見てよーー ハッと目を覚ますと 頬に滴が伝う感覚と共にそれが夢だったことに気が付いた 「…やな夢」 玄関を出て空を見上げる どんよりした空は…夢の中の景色が続いているみたいだった 気を取り直して行こうーー ーーー 「あれ…?おはよう。珍しいね。こんな時間に」 私の少し後に電車に乗り込んで来た菜穂がそう言った 「おはよ。ちょっと早く目が覚めてさ」 「そなんだ。まあ早起きは三文の徳って言うしね」 笑って元気に話す菜穂にとても嫌な夢を見て起きたとは言えない… しかもその夢に菜穂が絡んでるとなれば尚更だ 「今日も一日頑張ろうね!」 …ああ、眩しいな やっぱり私はどう転んでも彼女みたいにはなれない 菜穂は笑顔だけで人を癒すことができる人間だ それに引き替え私はーー 向かいの窓ガラス越しに自分の顔を見る 二人並んでみると、ますます自分の顔が陰気に見える つくづく神様は残酷だ…
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