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「な…菜穂ーーーっ!!」
私はすぐに菜穂の元に駆け寄ろうとした
「!?」
だけどそんな私を押しのけ
翔介さんが先に菜穂の元へ駆けつけた
「風見!風見!!」
意識が無いのを確認した後すぐに翔介さんは救急車を呼び出し止血の処置をとった
迅速に動く彼と反面、私はただただ狼狽し何も出来ない
横を見ると、私と同じようにタクシーの運転手も狼狽している
辺りでは、野次馬が人だかりを作っていた
慌ただしく動く周りの風景に、私は一人時が止まったような…夢の中にいるような気分だった
「…み…佳純!!」
「あっ…!ごめ…っ」
翔介さんの声で私は我に返る
「大丈夫か!?とりあえず救急車呼んだから佳純は会社に連絡を入れてくれ!僕はこのまま病院まで付き添うけど佳純も来れるか!?」
翔介さんの口調からいつになく焦りが伝わる
「行く……とりあえず会社に電話する…」
「頼んだ!」
私が会社に事の顛末を説明している間に救急車が来て菜穂を担架で運ぶ
私と翔介さんもそこに一緒に乗り込んだ
菜穂の手を握り、私は悔恨の念に苛まれた
昨日…私があんな事を思ったからだ
菜穂がいなければなんて…そんな事を考えたから
夢が正夢になっちゃったんだ……
それに…肩が熱い
さっき、翔介さんに押し退けられた感触が強く残っている
隣で菜穂の顔を見つめる翔介さんの横顔を見て確信してしまった
私はまだ彼女には到底及ばないという事を
どこに置いていけばいいかもわからない後悔ばかりを引き連れ
ただただ私は目の前の親友の無事を願う
今は
それが誰の為なのかもわからないーー
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