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病院に着くとすぐに菜穂は手術室へと運ばれていった
私と翔介さんは待合室でただそれを待つしか無かった
二人きりなのに、何も言葉が出てこない
昨日はあんなにも笑って、愛し合っていた私達なのに
まるで他人のように…声を掛け合うことが出来なかった
「佳純ちゃん!」
待合室に走って来たのは、菜穂のお母さんとお父さんだった
「…お久しぶりです。おばさん、おじさん」
私は病院に着くまでに菜穂のお母さんにも連絡を入れていた
急いで来たのか、二人とも息を切らし服も部屋着のようだった
「電話ありがとう!それで菜穂は!?」
「…今手術中です」
「車に轢かれたって……」
「…腹部に衝突して、激しく出血していました。一応出来うる限りの止血処置はしましたが…何分素人なので上手く出来たかは分かりません」
私の横から、翔介さんが会話に入りそう言った
「…あなたは?」
「…風見さんの友人の鳥谷と言います」
「菜穂の…友達の方?ありがとうございます。ここまで付き添ってくれて」
「佳純ちゃん。鳥谷君。本当にありがとう…」
菜穂のお母さんの隣で、菜穂のお父さんが深々と頭を下げた
「すみません…私一緒にいたのに」
「佳純ちゃんは悪く無いわ。疲れてるでしょう?今日はゆっくり休んで?」
「いえ!ここで待たせて下さい」
「僕も残ります」
「…二人とも…」
「よろしくお願いします」
それから数時間、待合室には沈黙が流れる
何度も何度も時計を確認するけど一向に時間が経たない
各々に祈りを込めるように手を合わせ目を閉じている
そして手術が終わり、先生が私達の元へとやってきた
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