加速

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「先生!娘は無事なんでしょうか!?」 最初に飛び出したのはお母さんだった 「…大丈夫です。肝臓を僅かに損傷していましたが、命に別状はありません。暫く入院は必要になりそうですが」 「っ…良かった…」 菜穂のご両親の安堵と共に、私と翔介さんも胸を撫で下ろす 本当に…良かった… 「…良かったね…?」 「…うん」 「二人とも…今日のところは私達に任せてもらえないかしら?」 「…わかりました。翔介さん…今日は帰ろ?」 私がそう言うと、翔介さんは一瞬とても哀しそうな顔をした 「…そうだね」 「二人は付き合ってるの?」 ふと菜穂のお母さんがそう尋ねてきた 私は勿論「はい」と答えるつもりだった だけどそれよりも早く先に言ったのは翔介さんだった 「いえ…友人です」 「…え!?」 自分の耳を疑った 何で… …嘘つくの? 「ね?」 優しく微笑む翔介さんに、私は引き攣った笑顔で「はい」と返すしか無かった 「ごめんなさい。てっきり付き合ってるのかと…」 「でもとても大切な友人です。花井さんも、風見さんも」 どうして…そんな事を言うの…? 何で…隠すの…? わからないよ…翔介さん… 「じゃあ花井さん、帰ろうか」 「…はい」 「二人とも、すまない。そして本当に…ありがとう!」 菜穂のお父さんもお母さんも、深々とお辞儀をしてくれた 「…また顔を出します。失礼します」 …また来るの? …何で翔介さんが来るの? …だって翔介さんは…菜穂と何の関係もないじゃない… 病院を後にした途端、私は翔介さんにさっきのことを尋ねようとした だけどーー機先を制するように、翔介さんが先に口を開いた 「佳純…ごめん。嘘ついて… …だけど、あの場で付き合ってると言うのは少し憚られたんだ」 「ーーどうして?」 「…うん……佳純には正直に言っておこうと思う…僕は、明日から風見が治るまでお見舞いに来るつもりだよ」 だから……どうしてなの… 貴方は私の… 「翔介さんは、私の彼なのに…?!どうして!?」 私は溢れ出した感情を抑えきれずに思わず彼に声を荒げてしまった
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