加速

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何でもういるの?? 仕事はどうしたの?まさか休んだの…? そんなに大事なの…? ていうか何で菜穂のお母さんと仲良さそうにするの? ねえ、翔介さん… 何で…何でなの!? 聞きたい言葉が頭の中で溢れて押し寄せる 「よお、翔介。久しぶりだな」 「うん…久しぶり。元気だった?涼」 「まあな。てか何でお前がここにいんの?」 呆然とする私を置き去りに、会話は進んでいた そして私も思う核心に、月島さんが触れてくれた 「…色々あってね」 「なんか昨日誘った身としては罪悪感感じちゃったんだって!悪いのは私なのにね」 違うよ菜穂 翔介さんは ずっと菜穂を想い続けてるんだよ 10年もの間、その想いを…秘め続けているんだよ 「そんなわけにはいかないよ。それにやっぱり風見のお母さんも車が無いと何かと不便だろうし」 「本当に助っちゃったわー。荷物まで持って貰っちゃって…申し訳ないわね」 嬉しそうに菜穂のお母さんがそう話す 「いえ、遠慮なく使って下さい」 「あまり無理はしないでね」 「ありがとう…鳥谷さん」 ほっこりとしたやりとりの傍らで、私は一人思い耽った ああ…いっそ…私も車に撥ねられようかな そうしたら貴方は… 私と菜穂、どっちを選んでくれるの? 「風見喉渇かねえか?何か飲むモン買いに売店行ってくるわ」 急に月島さんがそう切り出す 「大丈夫ですよ!」 「遠慮すんなよ。らしくねえぞ」 「らしくないってなんですか!じゃあお願いします!場所分かります?」 「俺土地勘ねえからなぁ…悪いけど花井来てくれね?」 「僕が行こうか?」 「いや、花井じゃなきゃ風見の好みわかんねえだろうし大丈夫だ」 「…そっか」 「行こうぜ」 「あ、はい…」 「すみません、少しだけ失礼します」 「ごめんなさい。愛想無しで」 「いえ、こちらこそ」 菜穂のお母さんにきちんと頭を下げ、月島さんは私を連れて病室を出た 「…居づらかったんじゃねえか?」 「え…?」 エレベーターに乗った途端、月島さんは私に尋ねてきた 「いや、まあ…自分の彼氏が他の女の為に動くのってあんまり気の良いもんじゃねえかと思ってよ。例えそれが親友でもな」 …気を遣ってくれたんだ 本当にこの人には…救われる 多分…月島さんを選んだらーー私は今みたいに悲しい思いをしなくて済むんだろうな だけどそれは 私の思い描く幸福には、程遠い どんな結末に至るとしても 翔介さんのいない未来に…幸せなんて無い 「まあ菜穂に限って間違いはありえないし、大丈夫ですよ」 「…てか翔介のやつ、なんか明るくなったと思う。昔はもっと暗かったんだが」 「それは花井のお陰なんじゃねえかな」 「…私は何も出来ていませんよ。何の力にもなれない」 「あんまり自分を卑下すんなって。現にここに一人そういう人間がいるんだからよ」 「え?」 「会社でお前の姿を見ると、頑張ろうって気持ちになれるんだよ!何故だかな」 「そうなんですか?」 「だからきっとあいつも俺と同じ筈だ。ま、違ったら謝るわ!」 クシャっと顔を崩して笑う月島さんを見て 普通の女性ならこの顔を見て落ちるだろうなと そう思った
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