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私のその問いに、彼は虚ろな目をしてそう答えた
「過去に何かあったの…?」
「…あんたに関係ねえだろ。それにアレを好きになる奴の方が奇特じゃね?」
「…確かに」
「で、話は戻って協力の内容だけどよ…
竣兄は俺を完全に手懐けてると思ってる。だから俺の事は疑わない。んで俺はあんたと翔兄がもう別れたと報告する。あんたはその間に…」
「…その間に?」
「既成事実でも作っとけばいいんじゃね?」
「…どういう事?」
「……やっぱアホ…子供作るって事だよ!」
「え…ぇええ!!?」
この人…急に何を言い出すの…
「子供さえ出来ちまえば竣兄も迂闊には手を出せなくなる。あんたの出方次第で翔兄の汚点にされる可能性があるからな…ウェルズの社長になるなら尚更それは避けたい筈だぜ」
…私が翔介さんが苦しむような真似する筈はないけど…
「…翔介さんは会社を継ぐ気はないと思うけど」
「いや、翔兄は結局何言ってたって最後には会社を継ぐって言うよ。親父の事は裏切れないからな」
そうなんだ…あんなに嫌がっていたのに…お父さんが頼むとまた意思が変わるのかな
「だけど、翔兄には絶対継がせねえ。会社は俺が継ぐからな」
「麟君は会社を継ぎたいんだ…」
「ああ。ゆくゆくはなんて待ってられねえからな!早く社長になりたいんだ!その為には翔兄に会社を継がれたら困るんだよ
だから俺があんたに協力してやる代わりに!なんとしても!あんたが翔兄に会社を継がせないよう説得しろ!」
「…私が?」
でもーーそもそも継ぐ気がないと言ってる人間にそんな話をしても意味ないと思うけど
だけどあまりに真剣にそう話す麟君を見て、私は言葉を飲み込んだ
「一応言っておくよ」
「最悪翔兄連れて海外に飛んでもいいんだぜ?」
そんな事
彼は絶対にしない
…しない理由があるから
「てなわけで既成事実作っとけよ。竣兄が相手だからあんまり長くは隠せねえよ」
「いやそれは…」
「あ、後言い忘れてたが」
立ち去ろうとした麟君は振り返って言った
「竣兄が翔兄のお見合い相手として用意した性格悪そうな女がいるんだけど」
…春宮さんか
「出来ればどうにかしねえとな」
「気を付けておくよ」
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