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「…春宮さん…何でここに?」
以前のような和装とは違い、ワンピース姿で彼女は凛と立っている
その姿はやっぱり私との差を歴然と示していた
「友人が出展しているのでお呼ばれされましたの。思った以上に人が多くて驚いています…」
「それにしても…」
「花井さんがまさか化粧品会社にお勤めしていらしたなんて…意外ですね」
…どう言う意味?
相変わらず…言葉の端々にトゲがあるな
「…よく言われます。すみませんが仕事中ですのでまた連絡しますね」
流石に仕事中に揉めるのは月島さんに迷惑がかかる
私を見下すような目つきで見ながら笑う彼女にもなるべく穏やかに返した
多分顔は笑ってないけど
「あら、では私もこのブースを拝見させていただきましょう」
そう言いながらお構いなしにズケズケとブース内に入って来る春宮さん
帰れよ…
「こちらの商品説明を聞かせていただいても?」
仕方ない…一応はお客様だ
そう自分に言い聞かせながら彼女に尋ねられた美顔器の説明を始める
彼女はずっと頷きながら私を見て微笑んでいる
「…あの、聞いてます?」
「え?ちゃんと聞いていますよ?あ、でも…思い出しました!美顔器は最近新しいのを友人から頂戴したばかりでした!すっかり忘れていましたわ…何分忘れ癖が激しいものでして」
「そ、そうなんですか」
青筋が立ちそうなのを我慢しながら、私は尚も穏やかに返す
「でしたらまた次回の出展の際お立ち寄りくださいね」
頼むから早く帰って…だんだん吐き気がしてきた…
「ところで…」
「…はい?」
「花井さんもお使いなんですか?こちらの美顔器は」
「え…?いやまあ、はい…使っています」
「…ふふっ、そうですか。
よろしければ私が使用している美顔器を差し上げましょうか?」
その一言を聞いた私は
たまたま横にあった化粧水の入ったボトルのフタを開け思いっきり彼女にぶちまけた
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