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「きゃあっ!!」
全身に化粧水を浴び悲鳴を上げる春宮さん
「も、申し訳ありません!手が滑ってしまいました!!すぐにお拭きします!」
周りの人にも聞こえるように私は大声でそう言った
この人は虚栄心が強い人だ
他の人が見ている前で無様な醜態を晒したりしない
自分は寛大で温和な人間だと思われたい筈
だから、私が謝れば許すしかない
「大丈夫ですよ?お気になさらないで下さい」
ほらね
やっぱり彼女は笑顔でそう対応してきた
本当は腹が立って仕方ないくせに
「お客様申し訳ございません!御洋服の方はこちらでクリーニング代をお出しします。一度裏までお越し頂いてもよろしいでしょうか?」
すぐに駆け付けてきた月島さんが春宮さんに声を掛けた
「分かりました。お手数おかけします」
月島さんはすぐに運営の人に話しに行き、私と共にブースの裏手に回った
「すみません月島さん」
「話は後だ」
真剣な顔付きで答える月島さんを見ると、少し罪悪感が込み上げてきた
だけど手が勝手に動いてしまったんだ
月島さんは拭く物を追加で取りに行った
その間私は丁寧に彼女の身体を拭きながら彼女に言った
「…春宮さん、貴方が私を敵視しているのはよく分かりました
でも、私もいつまでもやられたままでは終わりません
次はもっと酷い目にあわせますので、覚悟しておいて下さいね?」
私が突きつけたその言葉に、彼女は私を見下しながら微笑う
「そちらが貴方の素顔ですのね。ただ押し黙りもの言えぬ人形のような性格よりずっといいですよ」
「ありがとうございます。後、翔介さんは私の彼なので近付かないで下さい性格ブス女」
「ふふ、威嚇のおつもりでしょうか?陳腐すぎて笑ってしまいますわ。ですけど、肝に銘じておきます
次に会う時はお互い遠慮なく行くことにしましょう」
身体を拭き終えると、月島さんが戻るより先に早々と春宮さんは去っていく
「あれ!?お客様は!?」
「すみません。もう行っちゃいました」
「マジか!怒ってたか?」
「大丈夫でした…本当にすみません」
「焦るわマジで…いやでも何もなかったんなら良かった。賠償金とか言ってこられたらどうしようかと思ったぜ」
プライド高いから言う筈ないけどね
「しっかし、なんであんな被り方したんだ?わざとじゃねえとなかなかあんな掛かり方しねえぞ」
「ハハ…凄い偶然でした」
そう言うしかない。偶然かかるわけないけどね
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